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  • コラム

2025.07.14

【導入ストーリー】“探し出せない”が仕事を止めていた。――製造現場の知見を活かす、AIドキュメント探索システムの舞台裏

業務に眠る情報資産、なぜ活かせないのか?

製造業において、「過去の知見」は重要な資産です。
特に、長年にわたって開発が続く製品では、設計の根拠や改修の背景を正確に把握するために、過去のドキュメントに立ち返る必要があります。

しかし現場では今、深刻な課題が起きています。
──「必要な情報が、どこにあるかわからない」。

膨大な設計書・検証レポート・報告書が、部門ごとにバラバラに保存され、形式も命名規則も統一されていない。さらに、製品名や部品名には表記ゆれが多く、単純なキーワード検索では目的の資料にたどり着けない。
このような状況では、せっかくの過去資産も「眠ったままの情報」となり、現場では“過去のやり直し”が繰り返されていました。 こうした悩みは、製造業に限らず多くの業界で共通しています。

AI導入のきっかけは、“検索精度への違和感”

「AIで検索したい、でも精度が足りない。」

ある製造業のクライアント企業から、次のような相談をいただきました。

「社内に蓄積された過去の技術文書を、AIで“意味的に”検索できるようにしたい」
「ただし、RAG(Retrieval-Augmented Generation)という一般的な仕組みでは、検索の精度に限界があった」

※RAGとは:生成AIに社内ドキュメントの検索結果を組み合わせて回答させる技術で、ChatGPTなどを業務知識で強化する際に活用されます。

“AIを導入すれば、知りたい情報がすぐに見つかる”──そんな理想に対して、現実は甘くありません。
実際の業務現場では、検索ワードが曖昧だったり、情報の構造が複雑だったりといった壁があり、「思うように使えない」という声が多く上がっていました。

この企業もまさに、「理想と現実のギャップ」を前に、次の一歩を模索していたのです。

技術だけじゃない。業務理解から始めた検索改革

私たちが最初に取り組んだのは、「検索精度を上げる」ことではありませんでした。
本当に重要なのは、「誰が、どんな目的で、いつ、どんな資料を探しているのか」を知ること
つまり、業務そのものの流れを理解することでした。

現場の担当者に丁寧にヒアリングを行い、使いたい情報の粒度や業界独自の言い回し、略語・表記ゆれ、検索タイミングなど、現実の“探す行動”を具体的に洗い出していきました。

そのうえで、私たちは以下のような改善を積み重ねていきました。

  • フィルターの工夫:文書種別や作成部門で検索対象を絞り込み、ノイズを削減
  • ・クエリ加工:入力された検索語を、業界知識にもとづき自動的に補完・変換
  • ・表記ゆれ吸収:製品名・部品名の異なる表記を統一する前処理ロジックを設計
  • ・生成AIの調整:文脈に即した適切な回答を生成するようプロンプトを最適化

技術的には、Azure OpenAIやAzure AI Search、Azure Document Intelligence などを活用。
クラウド環境での運用を前提に、軽量かつ拡張性の高いアーキテクチャを構築しました。

“探す”から“活かす”へ。現場に起きた変化

「探す時間」が「考える時間」に変わった。

この取り組みにより、現場では目に見える変化が生まれました。

「今まで1時間かけて探していた資料が、数秒で見つかるようになった」
「過去の資料は“どうせ見つからない”と諦めていたが、AIで再び活用できるようになった」
「検索に手間取らないぶん、比較検討やアイデア出しに時間を割けるようになった」

ドキュメント探索という一見地味な作業の効率化が、結果的に「考える時間」を生み、製品開発全体の質の向上にもつながっています。

AI検索はゴールではない。業務改革の第一歩に

“AI検索導入”は、業務改革の出発点。

本事例が示しているのは、生成AIによる検索システムの導入が単なる「技術選定」ではなく、情報活用の文化を再構築する機会になるということです。

逆に言えば、もし今「うまく活用できていない」「期待ほどの効果が出ていない」と感じているなら、
その課題は技術ではなく、業務側にあるのかもしれません。

──あなたの組織では、「過去の知見」を本当に活かせていますか?

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私たちは、AIを「現場で使える仕組み」として実装する支援を得意としています。
単なる導入ではなく、業務目的の理解から運用支援までを一貫して伴走しています。

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