- 事例紹介
2025.08.04
【導入ストーリー】クラウドインフラ移行の成功事例|基幹システムを止めないマルチクラウド構成とは

業務インフラの“次の10年”を見据えて──クラウド移行に立ちはだかる壁
近年、業界を問わず多くの企業が「クラウドインフラへの移行」を進めています。背景には、ハードウェアの老朽化対策や、BCP(事業継続計画)への対応、システム柔軟性の確保など、さまざまな課題があります。
しかし、基幹システムの“クラウドリフト”(クラウド環境への移行)は、決して一筋縄ではいきません。データベースの性能要件や既存システムとの連携、移行に伴うリスク……。大手企業ほど、レガシー資産が多く、移行の難度は跳ね上がります。
今回ご紹介するのは、そうしたクラウド移行の課題に直面した、ある大手企業の挑戦と、私たちが技術・運用の両面から支援したプロジェクトの記録です。
プロジェクトの出発点:「クラウドにすればいい」という話ではなかった
ご相談をいただいたのは、全国規模で事業を展開する大手企業の情報システム部門。オンプレミス(社内サーバー)で長年運用されてきた基幹システムのクラウド移行を検討されていました。
背景には、老朽化したハードウェアの更新コストや、災害リスクへの備え、柔軟なリソース拡張ニーズなどがありました。
しかし担当者の口から出たのは、こうした一般的な理由だけではありません。
「クラウドなら何でも良いわけではない。性能要件をきちんと満たせる構成でなければ、業務が止まってしまう」
システムによって求められるレスポンスや可用性は異なり、一律でAWSに移行するだけではパフォーマンス不足となる可能性もある。そんな課題認識が、今回のプロジェクトの出発点でした。
私たちの提案・支援内容:性能に応じてクラウドを選び抜く「マルチクラウド設計」
今回、私たちは「クラウド移行」の先にある業務継続と最適運用を見据えて、以下の3つの観点から支援を行いました。
① PoC(概念実証)からスタート
まず、AWS上に構築された仮想基盤と、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)上にある既存DB基盤との間で発生し得るレイテンシー(通信の遅延)を計測。業務システムごとに必要な性能をシミュレーションし、最適なクラウド配置を見極めました。
② 「全部AWS」ではない、業務要件主導のクラウド構成
結果として、特にレスポンスが求められる重要な業務は、データベースとアプリケーションを同一基盤で動かすべくOCI上に移行。それ以外の業務はAWS上に展開するマルチクラウド構成を提案・設計しました。
クラウドベンダーの選定においても「AWS vs OCI」という発想ではなく、業務要件に応じて適材適所で選択するという視点を徹底しました。
③ クラウド間/オンプレ連携も含めた「全体最適」設計
マルチクラウド間の連携はもちろん、オンプレミスとの連携も含めた“ハイブリッド構成”を視野に入れ、全体の設計を一気通貫で実施。単なる技術導入ではなく、段階的なスケジューリングとリスク低減策をお客様とともに練り上げていきました。
「移行作業そのものより、移行後の“ちゃんと動く”をどう担保するかに力を注ぎました」
成果と変化:「クラウド移行」から「業務基盤の再構築」へ
最終的に、計画通りシステムのクラウド移行は完了。大きなトラブルもなく、業務の可用性・安定性が向上しました。とくにデータベース処理が求められる業務では、レイテンシーの改善効果が顕著に現れました。
さらに印象的だったのは、システム部門のマインドセットが変わったことです。
「クラウド化=移行という短期施策ではなく、業務のあるべき姿を考え直すきっかけになった」
今では、他業務へのクラウド展開を検討する動きが加速しており、社内での“クラウド推進文化”が芽生えつつあります。
示唆・まとめ:クラウド移行を“業務の視点”で捉え直す
今回のプロジェクトから得られた示唆は、「クラウド移行=技術の話」ではなく、「業務設計の話」であるということです。
単一のクラウドにこだわらず、「どう使うか」から逆算して構成を考えること。この視点が、これからのクラウド活用においてますます重要になっていくはずです。
インフラ基盤のクラウド移行を検討中の方へ
今回ご紹介したようなマルチクラウド構成や、既存システムとの連携を考慮した段階的なクラウドリフト支援は、当社が提供する「インフラクラウド構築ソリューション」の一部です。
クラウド基盤の設計から、運用・セキュリティ対応まで――
当社の提供価値や対応領域、他の導入事例などは以下のページで詳しくご紹介しています。
インフラのクラウド移行をお考えの方は、ぜひご覧ください。