- コラム
2025.08.19
社内利用に向けたAI開発 ― 営業と人材育成を変革する次の一手

身近なAIの進化と社内利用のギャップ
ChatGPT、Gemini、Claude、Genspark など、私たちの身の回りにある生成AIは、日々進化を遂げています。文章の生成、プログラムコードの作成、画像生成まで、個人利用の範囲では「これがあれば仕事が変わる」と思わせるほどの利便性を感じる人も多いでしょう。
しかし一方で、企業が「社内利用」を目的としてAIを導入しようとすると、現実はそう簡単ではありません。セキュリティ要件やコンプライアンス、データ管理の制約が厳しく、結果として「外で使っているAIの方が便利だ」と社員に思われてしまうこともしばしばです。
つまり、社内利用に向けたAI開発には「利便性」と「安全性」の両立が求められます。では、どのような視点で社内AIを設計すべきなのでしょうか。
社内利用AIに求められる3つの視点
1.セキュリティとガバナンス
情報漏洩リスクを防ぐため、アクセス制御やログ管理、データ匿名化は必須です。
2.業務特化性
汎用AIではなく、自社のナレッジ・業務プロセスに合わせて最適化する必要があります。
3.成果に直結するアウトプット
便利さのためのAIではなく、「どの業務で」「誰が」「どのような成果を出すか」を明確化した設計が不可欠です。
【事例】営業活動を変革するAI開発
現状の課題
営業担当者は日々、提案資料の作成やシナリオ準備に多くの時間を費やしています。過去の提案書や顧客情報を一から探し出し、カスタマイズする作業は、スピードが求められる現代のビジネスにおいて大きな負担です。
AI活用の方向性
- ・過去の提案事例や契約データをAIが解析し、顧客業界に応じた最適な提案ストーリーを提示
- ・競合比較や市場データを組み合わせ、短時間で「説得力のある提案書」を生成
- ・CRMデータと連動し、商談フェーズごとに必要なアプローチをレコメンド
成果
- ・提案資料作成時間を大幅に削減
- ・営業力の属人化を防ぎ、全社的に提案の質を均一化
- ・若手営業の即戦力化にも直結
【事例】人材育成を変革するAI開発
現状の課題
多くの企業が「社員のスキル可視化」や「個別最適な育成」に課題を抱えています。OJTや研修はどうしても属人化し、社員一人ひとりに最適な学習計画を提示するのは難しい状況です。
AI活用の方向性
- ・社員の学習履歴、研修受講状況、業務アウトプットをAIが解析
- ・個々のキャリア志向や評価履歴をもとに、「次に習得すべきスキル」や「おすすめ研修」を自動提示
- ・チーム単位でのスキルマップを可視化し、人材配置やプロジェクト参画計画に活用
成果
- ・社員の成長をデータドリブンに支援
- ・人材育成の効率化により、離職防止や早期戦力化を実現
- ・将来的には「リーダー候補の発掘」や「組織のスキルギャップ分析」にも発展
補足:経営・PMO領域での可能性
営業や人材育成に加え、社内利用AIは以下の領域でも大きな可能性を秘めています。
- ・経営意思決定支援:財務・顧客・人員データを統合し、シナリオ分析や将来予測をAIが提示
- ・プロジェクトマネジメント:進捗レポートや課題管理を解析し、リスク予兆やボトルネックを警告
これらは経営層やマネジメント層にとって、「判断の質とスピードを上げるAI活用」として注目されています。
成果を享受するための開発ステップ
1.目的定義:「どの業務に」「どのような成果を求めるか」を明確化
2.リスク評価:セキュリティ・コンプライアンス要件を洗い出す
3.PoC実施:小規模領域で試行し、フィードバックを収集
4.全社展開:成果が出た部分を横展開し、業務プロセスに組み込む
まとめ
身近なAIが急速に進化する中、社内利用AIは「便利さ」と「安全性」の両立を求められます。
特に営業活動の高度化や人材育成への活用は、企業の競争力を左右する領域です。
AI開発は単なるツール導入ではなく、 業務特化・成果設計・安全性 を突き詰めることが成功のカギです。